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原発の発電コストは、本当に安いのか…!? [原発]


 原発推進(擁護)派の方は、原発の発電コストは安いと言いますが、これは、本当なのでしょうか?

発電コストの比較.jpg


 アメリカのEIA2009年版の資料を読むと、

・太陽光 $396.1/MWh
・太陽熱 $256.6/MWh
・風力 $149.3/MWh
水力 $119.9/MWh
・原子力 $119.0/MWh
・地熱 $115.7/MWh
・バイオマス $111.0/MWh
・石炭 $100.4/MWh
・天然ガス $79.3/MWh

 発電コストが一番高いのは、なんと燃料代が要らないはずの太陽光発電($396.1/MWh)なのです。しかも、この値はネバダ砂漠のような太陽光の稼働率が高い場所が沢山ある米国の値です。高い稼働率が望めない日本では、この1.5倍から2倍程度になる可能性が高いと思います。

 一番発電コストが低いのは、やっぱり天然ガス($79.3/MWh)ですね。太陽光発電($396.1/MWh)に比べると、約五分の一で済むのです。

 さて、問題の原子力($119.0/MWh)の発電コストは、たしかに太陽光($396.1/MWh)や風力($149.3/MWh)に比べたら安いと言えます。しかし、天然ガス($79.3/MWh)にくらべたら、約1.5倍も高いのです。

 過去記事で、原子力発電は、最新の天然ガス火力発電に比べて温排水を三倍も出すので熱効率はよくないと書きました。そのうえ、発電コストを比較しても、原発は、最新の天然ガス火力発電に比べて1.5倍も高いのです。

 原発は、エコロジーでもなければ、エコノミーでもないというのは数字をみれば明らかなのです。こんな物がエコだなんて悪い冗談でしかありません。

 原発の代替として、一番ふさわしいのは、いまのところ、熱効率と経済効率の両面から見る限り、天然ガス火力発電しかないのです。

 原発($119.0/MWh)を太陽光発電($396.1/MWh)で代替するなんて、経済的には自殺行為に等しいと思います。そんな馬鹿げたことを考えるのは、太陽光発電パネルのメーカーから献金を受けた、売国政治家くらいではないかと… 菅さんが、太陽光発電パネルを1000万戸に設置すると言ったとか。日本経済にとどめを刺したいのでしょうか。勘弁して欲しいと思います。

 どうしても、自然エネルギーにこだわるのであれば、せめて、風さえあれば一日24時間発電が可能な風力($149.3/MWh)にすべきでしょう。でも、帆船がなぜ汽船に置き換わってしまったのかを考えれば、現実的な選択ではないと思います。時間をかければ、地熱($115.7/MWh)も有望なのですが、なぜか日本では不人気ですね…

 どちらにしても、原発の発電コストが、他の発電方式比べて最も安いというのは嘘のようです。

 将来的に発生する、核燃料の再処理費用や、核分裂生成物などの廃棄コスト、事故が起きた場合の賠償費用まで考えたら、経済的なメリットは全くと言っていいほどないと思います。

 メリットがあるのは、原発を喰い物にしている産官学の共同体と、それに操られている政治家くらいのものでしょう。

 将来的に、石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー資源が枯渇する可能性がないとは言えません。その場合、危険な原子力をなんとか改良しつつ、いまの文明社会を存続させるのか。あるいは、産業革命前の生活(人口)にもどる覚悟を決めるのか。

 それを決める権利は、いったい誰にあるのでしょうか。

(by 心如)
 

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沸騰水型だけが危ないというのは本当だろうか? [原発]

浜岡原発.JPG

 たまたま事故を起こした原発が沸騰水型だったというのは事実です。でも、沸騰水型は危ないが、加圧水型なら安全だというのは怪しいと思います。

 加圧水型でも、冷却システムが動かなくなれば、炉心溶融の危険性があるのは同じではないのでしょうか。

 沸騰水型だから危険だ、加圧水型なら安全だとはならないと私は思いますが…

(by 心如)


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原発の代替は天然ガスのはずですが…!? [原発]


 前記事で、「原発の代替として、一番ふさわしいのは、いまのところ、熱効率と経済効率の両面から見る限り、天然ガス火力発電しかないのです。」と、書きました。

 どうして、最新の天然ガス火力発電(Natural Gas-fired Advanced Combined Cycle)がよいのでしょうか。

 通常の火力では、燃焼熱で水蒸気を作り蒸気タービンを回し、その力で発電機を回して発電します。これだと、効率は最大でも47%くらいにしかなりません。

コンバインドサイクル発電.jpg

 最新の天然ガス火力発電では、コンバインドサイクル(Combined Cycle)発電という方式を取り入れているのです。
 「コンバインド(Combined)」とは「結合した」という意味だと思います。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電機を回す複合サイクル発電なので、熱効率が60%という高さになるのです。
 まず、ガスの燃焼でジェットエンジンと同様にガスタービンを回し、さらに、その燃焼ガスの熱で水蒸気を作り、水蒸気タービンを回し、二つのタービンの力を結合して発電機を回すので効率が向上したのです。

 同じ出力の発電所を作る場合、原発に比べて天然ガス火力なら、十分の一の面積があれば建設が可能だと聞きます。建設費も十分の一で済むそうです。建設期間も、十分の一くらいで可能だと思います。

 天然ガス火力は利点がいっぱいあります。気がかりなのは、天然ガスが将来的にも安定供給が可能なのかという点だけです。米国でシェールガス革命と呼ばれる採掘方法の改良が行なわれ、安定供給が見込めるのではないかと期待しています。

 しかし、現行の日本の電力行政では、コストに一定の比率を掛けて、電気料金を決める方式になっています。コストの高い原発を止めて、コストの安い天然ガス複合サイクル発電に切り替えると、大幅なコストダウンになってしまいます。これは、電力会社の利益も目減りしてしまうことを意味します。
 脱原発をするのはよい事だと思います。
 でも、電力会社の経営者が、自分達の役員報酬が減ってしまう天然ガスを大幅に取り入れるでしょうか。反対に、再生可能エネルギーという大義名分を振りかざして、原発よりもコストが高い太陽光発電に向かうのではないかと心配しています。

 本来ならば、電気代はもっと安くできるのです。電力会社の経営者や、その取巻きたち(政治家や、役人、御用学者、協力会社、提灯記事を書く記者など)の懐に入るカネを増やすために、わざとコストの高い原発を推進し、利用者に高い電気代を押し付けてきたのが、いままでの日本の電力行政だったのですから…

(by 心如)
 


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原発は効率が悪い…!?(其の二) [原発]


 原発は効率が悪いと、前記事に書きました。

 100万kW二基を、定格出力で運転している場合で比較します。

 原発の熱効率は33%ですから、
200万kW ×(100 ÷ 33 - 1)= 406万kWの廃熱を出します。
 これに対して、最新の天然ガス火力発電の熱効率は60%ですから、
200万kW ×(100 ÷ 60 - 1)= 133.3万kWの廃熱で済むのです。
 原発(406万kW)と、天然ガス火力(133.3万kW)を比べたら、
三倍も廃熱量が違うのは事実なのです。

 もうひとつ、原発の欠点として、出力の調整が短時間では出来ないという点があります。

 一度、運転を停止した原発を、定格出力までもっていくのに一週間もかかると聞きます。
 よって、昼間の電力が沢山いる場合と、深夜から早朝の電力が余る場合で、原子炉の出力を調節できないのが原発なのです。

 仮に、深夜の電力消費が半分になった場合で考えます。必要な電力は100万kWですから、出力の調整ができない原発は、506万kWの廃熱を出す事になるのです。
 それに対し、火力発電は、電力消費が半分になれば、一基の発電機を停止して、燃料の消費を半分にできますので、100万kW×(100÷60 - 1)=66.7万kWの廃熱で済むのです。
 同じ200万kWの発電容量の発電所でも、電力消費が半減した場合、原発が506万kWで、火力発電が66.7万kWとなり、約7.6倍も廃熱量が違ってしまうのです。

 こういう事情があるので、揚水発電所を建設し、夜間に原発の余った電力で、揚水を行なう必要が出てくるのです。

 深夜から早朝にかけて、消費電力が減ったとき、廃熱量も下がるべきなのですが、原発は電力消費が減っても発電量を調節できない、効率の悪い発電方式なのです(そのために、最低気温が本来よりも高くなり、原発周辺の平均気温を引き上げている可能性を疑っています)。

 しかし、原発は、火力発電に比べて、出力調節の出来ない非効率な発電方式だとは、原発推進(擁護)派の方は口にしません。

 原発に不利なことは無かったことにするのが、いま現在の日本のシステムなのですから…

(by 心如)
 

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原発は効率が悪い…!?(其の一) [原発]

 原発の温排水は、原発周辺の温暖化に影響している可能性が高いと、前記事に書きました。

 これに対し、火力発電所だって温排水を出しているのは同じだという意見もあろうかと思います。

 でも、原発と火力発電では、熱効率が二倍近く違うのです。

 原発は熱効率が約33%しかありません。

 200万kW ×(100 ÷ 33 - 1)= 406万kW

 熱効率33%の原発で、200万kWの電力を発電すると、406万kW分の排熱が出てきます。

 これに対して、最新の天然ガス火力発電の熱効率は60%です。

 200万kW ×(100 ÷ 60 - 1)= 133.3万kW

 熱効率60%の火力発電で、同じ200万kWの電力を発電しても、133.3万kW分の排熱で済む計算です。

 原発の排熱(406万kW)と、天然ガス火力の排熱(133.3万kW)を比べたら、なんと三倍も量が違うのです。

 原発は、火力発電に比べて、三倍の量の温排水を出すのです。

 火力発電だって、周辺の気候に影響を与えているという可能性はあります。

 しかし、原発は、火力発電に比べて、三倍の温排水を出しているということを、原発推進(擁護)派の方は、絶対に口にしません。

 原発に不利なことは無かったことにするのが、いま現在の日本のシステムのようです。

(by 心如)
 
 

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原発の影響はどの程度なのか [原発]

―――
『表面水温カラー図』

表面水温カラー図 20110730.JPG
【海水温のカラー水温図】
 NOAAの海水温解析値と測量船等から通報された海水温を合成して
 カラー水温図を描画しています。
 暖色系は高水温、寒色系は低水温を表しています。
―――
『日々水温偏差図』

日々水温偏差図 20110730.JPG
【海水温の平年値からの偏差図】
 NOAAの海水温解析値と測量船等から通報された海水温を合成して
 海水温平年値(30年平均)と比較してその差を描画しています。
 暖色系は正偏差、寒色系は負偏差を表しています。
―――

 海上保安庁の海面温度のデータですが、福島県沖と静岡県沖の海面温度が平年よりも低いのが読み取れます

 福島第一、第二原発の運転が止まっているのと、浜岡原発の運転停止の影響がどの程度あるのか、あるいはないのか…

 100万kwの原発は、熱効率が33%として、200万kwの排熱を海に捨て続けないと発電が出来ません。

 200万×1000÷4.1855=4.778×10^8calという大きな熱量になります。

 これは、取水口と排水口の温度差を7℃以下にしようとすれば、

 4.778×10^8÷7÷10^6=68.25 ですから、

 毎秒、約70tの冷却水を使わないと冷却できないことを意味します(毎秒、70tの海水を汲み上げるポンプというのも凄いなと思いますが…)

 原発の排水口からは、一秒間に、約70tの温排水が放出されているのです。

 海が広いので、この程度の排熱は問題にする必要がないと、原発推進(擁護)派の人は言います。

 でも、皆さんも夏に海水浴に行かれたら経験すると思いますが、海面の温度がある程度暖かくても、少し潜ると海水の温度は急激に低下します。これは、海面の暖かい水と、数メートル下の冷たい水が、簡単には混ざらないことを意味しています。なぜそうなるのかは、理科の時間に習ったと思いますが、水の比重は4℃くらいが最大なので、冷たい水は下に行き、暖かい水は上にたまってしまうのです。だから、ガス釜のお風呂は、とくに冬場など、表面が手を入れられないくらい熱くても、底のほうは冷たいということがあるのです。表面が熱くなっても、よくかき混ぜたらぬるいということになるのはそのせいです。
 広い海と、家庭のお風呂を一緒にするなと、原発推進(擁護)派の人が言いそうですが、暖かい水は表面にたまり、下の冷たい水とは簡単には混ざらないというのは事実だと思います。

 100万kwの原発一基で、毎秒70tです。100万kw二基では、毎秒140tの温排水を出すことになります(一時間で、504,000t。一日で、12,096,000tです)。

 この温排水が、原発周辺の海面温度に影響を及ぼさないというのは本当でしょうか?

 国民の健康被害を招く放射性物質漏れのデータすら隠ぺいする政府と、それを擁護する御用学者たちです。

 原発の排熱が、原発周辺の温暖化の原因の一つだと正直に言うはずがないと思うのは私だけでしょうか。

(by 心如)
 

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原発がクリーンエネルギーだなんて、誰が言い出したのか…!? [原発]

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http://diamond.jp/articles/-/12075
福島原発震災 チェルノブイリの教訓(5)
「クリーンエネルギー原子力推進」をだれが言い出したのか

 「原子力はクリーンエネルギー」と、いつだれが言い出したのだろうか。最初に聞いたのはいつだったか、どうしても思い出せないのだが、チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)の3、4年後だったと思う。
 はじめは悪い冗談だと聞き流していたが、1990年代に入ると地球温暖化の危機が国際的な大問題となり、発電時に炭酸ガスを排出しない「原発はクリーンエネルギー」として再登場したのである。チェルノブイリの教訓で脱原発を図ったのは、イタリア、スウェーデン、ドイツ、スイスなど、欧州の限られた国だった。
 原発はたしかに炭酸ガスを排出しないが、放射性物質を出し、核廃棄物の最終処分をどうするか、まったく見通しが立っていない。大事故が起こればチェルノブイリ事故のように国境を越えて被害を与える。常識をもって考察すれば、クリーンだとはとうてい思えないのだが、いつのまにかクリーンエネルギーになっていた。
 史上最悪の環境破壊はチェルノブイリ原発事故である。25年後の現在も半径30キロ圏内は立ち入り禁止だ。どうして「地球に優しいクリーンエネルギーの主役」に化けたのだろう。これは原子力産業と推進国政府によるPR作戦の勝利だった。
 この3月29日の衆院予算委員会で、菅直人首相は「太陽エネルギー、バイオなどのクリーンエネルギーを世界の先頭に立って開発し、大きな柱とする」と答弁している。筆者が聞いた首相の発言の中で、もっとも明確なビジョンである。
 この首相発言は、原発推進からの大転換と聞こえたが、はっきり言っていないので、あとで再転換するかもしれないが、少なくとも「クリーンエネルギー」の中に原子力は入っていない。
 一方、米国のオバマ大統領は3月30日の講演で、「2035年までに電力の80%をクリーンエネルギーでつくる。原子力は風力や太陽光発電と同様、クリーンエネルギーである」と語っている。オバマ大統領は「クリーンエネルギー」に原子力を入れている。
 「クリーンエネルギー」の言説をさかのぼっていくと、「炭酸ガスを排出しないからクリーンだ」という根拠に行き着く。地球温暖化防止の国際会議のたびに「クリーンエネルギー原子力」のPRが増えた。
 このPRの中では、核廃棄物問題はまったく出てこない。「原子力は安全ならばクリーンだ」というわけだ。当たり前である。「問題を考えなければ問題はない」と言っているだけだった。
 クリーンエネルギーという言葉は、エイモリー・ロビンズ――エイモリー・ロビンズ(1947-)は米国ロッキーマウンテン研究所所長、物理学者。ハーバード大学を経てオックスフォード大学へ。のちに米国で物理学者、エネルギー学者として「ソフトエネルギー」の推進を訴えている――の名著『ソフト・エネルギー・パス』(1977)で初めて登場する。スリーマイル原発事故(1979年)の直前、チェルノブイリ事故の10年前である。
 ロビンズは再生可能な自然エネルギーをソフトエネルギーとして、原子力や石油、石炭火力に対してクリーンエネルギーだとした。ロビンズによるクリーンエネルギーの定義は、生態系に適応する自然エネルギーのことである。もちろん原子力は入っていない。
 チェルノブイリ事故は世界に衝撃を与えたが、わずか3年後の1989年、原発先進国のフランスが、炭酸ガスを排出しない原子力というコンセプトを打ち出す。前年の1988年、米国NASAのジェームズ・ハンセンが上院公聴会で「地球は温暖化しており、原因は炭酸ガスにある」として世界的な反響を呼ぶ。地球温暖化=炭酸ガス=炭酸ガスを出さない原子力=クリーンエネルギーという図式が登場したのである。
 当時フランスではミッテラン大統領自ら原子力は炭酸ガスを出さないクリーンエネルギーだと主張し始めている。日本でも1988年版「原子力白書」(原子力委員会)で、原発は温暖化への抑止になる、と初めて記述している。
 この時点から原子力村(産官学の利益集団)は積極的に「炭酸ガスを出さないエネルギーは原子力」をPRするようになった。つまり、国民の頭に「クリーンエネルギー」を刷り込みはじめたのである。
 この議論は世界で急速に普及し、地球温暖化防止の重要な役割が原発にある、と多くの人々が思うようになった。喉もと過ぎればなんとやらである。チェルノブイリのわずか2年後のことだ。
 原子力推進の総本山IAEA(国際原子力機関)のハンス・ブリックス事務局長――ハンス・ブリックス(1928-)はスウェーデンの政治家。同国外務大臣を経て、1981年から1997年まで国際原子力機関事務局長をつとめた――の面白い発言が当時の新聞に掲載されているので紹介しよう。

 「『大気汚染問題がこんなにホットになって、驚いている』――国際原子力機関(IAEA)のH・ブリックス事務局長は、複雑な思いを味わっている。つい最近までソ連のチェルノブイリ原発事故の後遺症で世論の冷たい風にさらされていたのが、一躍大気を汚さないクリーンエネルギーとして原子力に関心が集まったからだ。」(「日本経済新聞」1989年7月21日付)

 原子力の平和利用推進と監査機関であるIAEAのトップも驚くほど、急速に原子力はクリーンだという言説が広がっていた。ハンス・ブリックス自身は眉にツバをつけて聞いていたわけである。あまりにも面白く、20年以上経っても忘れられない記事となった。
 1990年2月、通産省(現在の経産省)は1990年から2000年までの10年間を「省エネルギー推進期間」、2000年から2010年までの10年間を「クリーンエネルギー推進期間」とする「地球再生計画」を発表した。クリーンエネルギー推進のための方策が原子力推進である。
 1990年5月、環境庁(現在の環境省)は「環境白書」を発表し、この中で「環境への負荷の少ないエネルギー源としては、適切な範囲内での天然ガスの導入、また安全性の確保を前提として国際的にも原子力の重要性が認識されている」としている。
 大事故から4年、1990年に日本では完全に「チェルノブイリの教訓」は消滅したのである。
 米国では1979年のスリーマイル島原発事故以来、原発の新設はストップしていた。「スリーマイルの教訓」である。しかし、湾岸戦争(1989年)によって原油の中東依存が問題視されると、ブッシュ(シニア)大統領は1991年2月、原発の新設を含む新エネルギー計画を発表する。現在も新設は進んでいないが、計画だけは出ている。
 米国ではクリントン政権をはさんでブッシュ(ジュニア)大統領、現在のオバマ大統領とも、「クリーンエネルギー原子力推進」政策を打ち出している。とくにブッシュ(ジュニア)政権時代には強く推進し、これをもって「原子力ルネサンス」と呼ばれ、日米欧の原子力産業は新興国への原発輸出競争を開始し、現在にいたっている。
 この20年間、東海村の臨界事故を除いて決定的な重大事故がなかったため、「クリーンエネルギー原子力」は人々の脳裏に焼きつくことになった。途中1997年の京都議定書をめぐる地球温暖化防止国際会議をはさみ、温暖化対策としての「クリーンエネルギー原子力」は定着していった。
 事故から25年経過し、40歳代以下の世代はチェルノブイリ原発などまったく知らない。福島原発事故の直後、20歳代の知人5人に感想を聞いたところ、「それでも原発はクリーンですからねえ」というので仰天した。炭酸ガス排出と放射性物質の飛散は別物らしい。炭酸ガスを出さなければクリーンだというわけだ。
 「いま、福島の環境は強く汚染されているんだよ」というと、「あ、そうか」とすぐに気づくのだが。
 この20年を振り返ると、日本社会党の路線転換の影響も大きい。チェルノブイリ以後、脱原発を政策として掲げていた大政党は社会党だけだったのだが、1993年2月、原発容認へ180度転換した。その後、紆余曲折を経て社会党の大多数は民主党に合流し、民主党は政権奪還後、自民党以上に新興国への原子炉輸出促進に動いている。
 はたして福島原発事故で「クリーンエネルギー原子力」の呪縛は解けるのだろうか。菅首相の「本来のクリーンエネルギー推進」のビジョンは徹底されるのだろうか。
 少なくとも、わずか4年で消滅した「チェルノブイリの教訓」とは異なり、「福島の教訓」は4年では消えそうもない。4年後、溶融した燃料棒の一部でも搬出できているかどうか、まったくわからないのである。
―――

 要点を整理すると、下記のようになります。

・1986年、チェルノブイリ原発事故
・1988年、米国NASAのジェームズ・ハンセンが上院公聴会で「地球は温暖化しており、原因は炭酸ガスにある」として世界的な反響を呼ぶ。地球温暖化=炭酸ガス=炭酸ガスを出さない原子力=クリーンエネルギーという図式が登場したのである。
・1989年、原発先進国のフランスが、炭酸ガスを排出しない原子力というコンセプトを打ち出す。
 日本でも1988年版「原子力白書」(原子力委員会)で、原発は温暖化への抑止になる、と初めて記述している。
・1990年2月、通産省(現在の経産省)は1990年から2000年までの10年間を「省エネルギー推進期間」、2000年から2010年までの10年間を「クリーンエネルギー推進期間」とする「地球再生計画」を発表した。クリーンエネルギー推進のための方策が原子力推進である。
・1990年5月、環境庁(現在の環境省)は「環境白書」を発表し、この中で「環境への負荷の少ないエネルギー源としては、適切な範囲内での天然ガスの導入、また安全性の確保を前提として国際的にも原子力の重要性が認識されている」としている。
 大事故から4年、1990年に日本では完全に「チェルノブイリの教訓」は消滅したのである。
 
 原子力発電をクリーンエネルギーだと言い出したのは、核燃料ビジネスや原発の電力販売で金儲けをしているアメリカとフランスだと言ってよいと思います。
 当然、国策として原発を推進したい日本の産官学の利益集団と操り人形にも等しい政治家が、この流れを積極的に利用したのは言うまでもありません。また、警鐘を鳴らすべきマスコミは、温暖化防止キャンペーンのCM料に目が眩み、片棒を担いでしまったのです。

 「地球に優しく」とか「温暖化防止」などと言いながら、国民の頭に「原子力発電」=「クリーンエネルギー」という刷り込みをしたのは、政府(経産省・環境省)とマスコミだったのだと思います。

 頭に刷り込まれた、「二酸化炭素を出さないからクリーンだ」という話を考え直すべきではないかと思います。

(by 心如)
 


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あまりにも無責任ではないのか…!? [原発]

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http://www.asahi.com/business/update/0507/NGY201105070002.html?ref=reca
『燃料調達できても…浜岡原発停止のコスト、中部電に重荷』
2011年5月7日11時29分

 菅直人首相から原発の全面停止を突然言い渡された中部電力。浜岡原発1号機の着工以来約40年、原子力政策を二人三脚で進めた国の方針には背けない。だが、停止までに解決しなければならない課題は多い。

 「東北電力も東京電力も原発が止まって火力で代替する。(液化天然ガス〈LNG〉などの)燃料確保は非常に厳しい」。今月5日、中部電の水野明久社長はそう話していた。

 浜岡全3基の代替に、中部電も火力発電所の出力増強や停止中の古い火力を動かすことになる。ただ、中国などアジア各国の石油需要は高まるばかり。「LNGなどの調達は長期契約が基本で、すぐに買い付けられるものではない」(中部電幹部)。燃料の確保がまずは大きな問題として立ちはだかる。

 燃料が確保できても、価格高騰で中部電の経営を圧迫するのは確実だ。原発3基を止めて生じる負担は1日に7億円。半年続けると、今年度の営業利益見込みにあたる1300億円がほぼ吹き飛ぶ。

 国側は「中部電が原発停止を決めても、あくまで自主判断」との認識を示す。お金のかかる火力への切り替えは、中部電にとっては「株主に説明できず、経営陣が訴えられる可能性もある」(幹部)との危機感がある。株主へ説明責任も問われている。

 経営悪化を避けるため、中部電が燃料費や設備投資の増加分を、電気料金に反映させる可能性もある。値上げは電気事業法で認められてはいるが、浜岡原発は「安全」と主張してきただけに、急な方向転換は説明が難しく、地元や電気を使う企業、家庭からの反発もありそうだ。

 さらに、原発全基停止は中部電だけの問題でなくなる。

 中部電は余った電力を東京電力に分け与えている。その余裕が減るのを見越し、海江田万里経済産業相は関西電力に中部電への供給を要請。電力がところてんを押すように関電→中部電→東電へと流れる仕組みを検討中だ。ただ、関電も定期検査中の原発があり、中部電にどれだけ協力できるかは不透明だ。(大月規義)
―――

 「国側は、中部電が原発停止を決めても、あくまで自主判断との認識を示す。」
と、記事にあります。

 これは、中部電力が自主的に判断したのだから、損失が出ても関知しないという意味でしょうか?

 一国の総理大臣が、政治的な判断で、原発の運転停止を電力会社に要請しておいて、それによる損害は関知しないというのはどうなのでしょうか?

 もともと、原発は安全だと言って推進してきたのは政府・経済産業省だったのです。二・三日前までは安全で問題はないといっていたのはおなじ政府だったのですが…


 一日、七億円、年間で2500億円(今後の燃料の高騰があればさらに増える)も燃料コストが増加し、赤字に転落してしまうのに、要請した総理がその損失には知らん顔をできるのだろうか… あまりにも無責任ではないのかと思います。

 原発の運転を停止しても電力供給には何の問題もないと言っていた人たちは、当然、喜んで高い電気代を払う覚悟をお持ちだと思います。

 この際、電気代やガス代、ガソリン代などの値上がりは、甘受すべきなのだと思うのは、私だけでしょうか。。。

(by 心如)
 


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どうして浜岡だけなのか…!? [原発]

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http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110506-OYT1T00758.htm
『停止要請「英断」「唐突」「党内調整不十分」』

 菅首相が中部電力浜岡原子力発電所のすべての原子炉を運転停止する方針を示したことについて、民主党内では「原発に対する国民の不安を意識した、首相の英断だ」(ベテラン議員)と評価する声が上がったが、自民党内では「唐突な発表だ」と戸惑いや反発が広がっており、同党をはじめ、野党は国会で追及する構えだ。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡る菅政権の対応は「後手に回った」として世論の評価が低く、民主党内の「菅降ろし」にもつながっている。首相に近い閣僚の一人は6日夜、「今回の決断で国民の支持が戻れば、党内も落ち着くのではないか」と語り、倒閣に動いてきた小沢一郎元代表グループも首相を批判しにくくなるとの見方を示した。

 静岡県選出の民主党の牧野聖修衆院議員は、「素晴らしい決断だ。浜岡原発の地元では、東海地震が浜岡原発の放射能漏れ事故につながるという不安の声が広がっていた。私も海江田経済産業相に、こうした声を届けていたが、それが受け入れられて、本当によかった」と述べた。

 ただ、今回の停止要請を発表直前まで知らなかった小沢グループのある議員は「党内調整が不十分だ。そもそも、なぜ浜岡原発だけなのか、理解に苦しむ」と批判。政調幹部も「日本の原発はダメだという誤ったメッセージを発信することになりかねない」と懸念を示すなど、今回の判断が首相の政権基盤の強化につながるかどうかは微妙だ。

(2011年5月6日21時18分  読売新聞)
―――

 東京電力の福島第一原子力発電所で事故が起き、その対応がまずいままなのに…

 菅おろしに対抗するために、浜岡原発の原子炉を全部停止しろとは…

 これが、純粋に国民の安全と健康を守るためなら、どうして浜岡だけなのかと言わざるを得ない


 結局、保身のためのパフォーマンスであって、

 国民の安全を第一に考えているとは言えないのではないかと思います


 そうではないと言うのであれば、全国の原発を点検し、

 地震と津波に対する備えができているものに限り、運転してもよいと言うべきだと思いますが…

(by 心如)
 

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想定外と言えるのか(その二) [原発]

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http://www.asahi.com/national/update/0419/OSK201104190035.html
『東電サイト「最大級の津波を想定」…事故1カ月後に削除』
2011年4月19日15時5分

 東京電力が福島第一原発の事故を受け、自社のホームページ(HP)から「想定される最大級の津波を評価し、重要施設の安全性を確認しています」などと紹介した津波対策の記載を、事故後1カ月以上たった後に削除していたことが分かった。東電は「従来の対策を掲載し続けることはおかしい、と(閲覧者から)おしかりを受けたため削除した」と説明している。
 東電によると、13日にHPを一新した際、津波対策のページを削除した。事故の後も、HPに「考えられる最大の地震も考慮して設計しています」などという対策が載り続けていることに対し、閲覧者から非難の声が寄せられたという。
 そのページには、津波対策として「敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています」と記載。イラスト付きで「発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています」としていた。(木村俊介)

津波への対策100.jpg
削除された津波対策を紹介していたページ。「様々な安全対策を講じています」などと記載されていた=東電のホームページから
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 東電は、
「想定される最大級の津波を評価し、重要施設の安全性を確認しています」
と、ホームページに記載していたそうです。

 明治三陸沖地震と同じ程度の津波すら想定していなかったのに・・・

 東電にとって都合の良い地震学者(御用学者)だけを集めて想定の範囲を決めていたとしか思えません

 今回の福島原発の事故は、政官学の共同体と電力会社の癒着が起こした人災だと言わざるを得ないと思います

(by 心如)
 

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