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また、国民を騙すのか…!? [社会]

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http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110906-OYT1T01165.htm
エネルギー政策 展望なき「脱原発」と決別を(9月7日付・読売社説)

 ◆再稼働で電力不足の解消急げ◆

 電力をはじめとしたエネルギーの安定供給は、豊かな国民生活の維持に不可欠である。
 ところが、福島第一原子力発電所の事故に伴い定期検査で停止した原発の運転再開にメドが立たず、電力不足が長期化している。
 野田首相は、電力を「経済の血液」と位置づけ、安全が確認された原発を再稼働する方針を示している。唐突に「脱原発依存」を掲げた菅前首相とは一線を画す、現実的な対応は評価できる。
 首相は将来も原発を活用し続けるかどうか、考えを明らかにしていない。この際、前首相の安易な「脱原発」に決別すべきだ。

 ◆節電だけでは足りない◆

 東京電力と東北電力の管内で実施してきた15%の電力制限は、今週中にすべて解除される。
 企業や家庭の節電努力で夏の電力危機をひとまず乗り切ったが、先行きは綱渡りだ。
 全国54基の原発で動いているのは11基だ。再稼働できないと運転中の原発は年末には6基に減る。来春にはゼロになり、震災前の全発電量の3割が失われる。
 そうなれば、電力不足の割合は来年夏に全国平均で9%、原発依存の高い関西電力管内では19%にも達する。今年より厳しい電力制限の実施が不可避だろう。
 原発がなくなっても、節電さえすれば生活や産業に大きな影響はない、と考えるのは間違いだ。
 不足分を火力発電で補うために必要な燃料費は3兆円を超え、料金に転嫁すると家庭で約2割、産業では4割近く値上がりするとの試算もある。震災と超円高に苦しむ産業界には大打撃となろう。
 菅政権が再稼働の条件に導入したストレステスト(耐性検査)を着実に実施し、原発の運転再開を実現することが欠かせない。
 電力各社が行ったテスト結果を評価する原子力安全・保安院と、それを確認する原子力安全委員会の責任は重い。
 運転再開への最大の難関は、地元自治体の理解を得ることだ。原発の安全について国が責任を持ち、首相自ら説得にあたるなど、誠意ある対応が求められる。
 野田首相は就任記者会見で、原発新設を「現実的に困難」とし、寿命がきた原子炉は廃炉にすると述べた。これについて鉢呂経済産業相は、報道各社のインタビューで、将来は基本的に「原発ゼロ」になるとの見通しを示した。

 ◆「新設断念」は早過ぎる◆

 代替電源を確保する展望があるわけではないのに、原発新設の可能性を全否定するかのような見解を示すのは早すぎる。
 首相は脱原発を示唆する一方、新興国などに原発の輸出を続け、原子力技術を蓄積する必要性を強調している。だが、原発の建設をやめた国から、原発を輸入する国があるとは思えない。
 政府は現行の「エネルギー基本計画」を見直し、将来の原発依存度を引き下げる方向だ。首相は、原発が減る分の電力を、太陽光など自然エネルギーと節電でまかなう考えを示している。
 国内自給できる自然エネルギーの拡大は望ましいが、水力を除けば全発電量の1%に過ぎない。現状では発電コストも高い。過大に期待するのは禁物である。
 原子力と火力を含むエネルギーのベストな組み合わせについて、現状を踏まえた論議が重要だ。
 日本が脱原発に向かうとすれば、原子力技術の衰退は避けられない。蓄積した高い技術と原発事故の教訓を、より安全な原子炉の開発などに活用していくことこそ、日本の責務と言えよう。

 ◆原子力技術の衰退防げ◆

 高性能で安全な原発を今後も新設していく、という選択肢を排除すべきではない。
 中国やインドなど新興国は原発の大幅な増設を計画している。日本が原発を輸出し、安全操業の技術も供与することは、原発事故のリスク低減に役立つはずだ。
 日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約(NPT)体制の強化に努め、核兵器の材料になり得るプルトニウムの利用が認められている。こうした現状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実だ。
 首相は感情的な「脱原発」ムードに流されず、原子力をめぐる世界情勢を冷静に分析して、エネルギー政策を推進すべきだ。

(2011年9月7日01時19分  読売新聞)
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記事の中に、
「日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約(NPT)体制の強化に努め、核兵器の材料になり得るプルトニウムの利用が認められている。」
という記述があります。
 これは、事実誤認もはなはだしいと思います。普通の軽水炉で生成されるプルトニウムは、核兵器の材料には適さないからです。

―――
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0
 核兵器原料としてのプルトニウム

 239Pu の中に不純物として20 % 240Pu が含まれると、インプロージョン型核兵器の中で分裂連鎖反応が受容しがたいほど早く始まり、その材料がほとんど核分裂しない間にその兵器をばらばらに吹き飛ばしてしまう(過早爆発)。ガンバレル型の場合は 240Pu 混入1 %前後で過早爆発が起きる。この 240Pu の混入が避けられないことが、プルトニウム武器ではインプロージョン方式の設計にしなければならない理由である。理論的には100 %純粋な 239Pu ならばガンバレル型装置を構築することができるかもしれないが、このレベルの純度は現実には達成し得ないほど困難である。インプロージョン型核兵器であっても240Pu 10 %以下にせねばならず、軽水炉ではそれが達成困難なので、核兵器製造には黒鉛炉が使用される。
―――

 核兵器を作るには、プルトニウム239の純度を90%以上にしないといけないそうです。軽水炉では達成困難なので、核兵器製造には黒鉛炉(チェルノブイリ型)が必要になるのです。

 日本の原発54基はすべて軽水炉です。よって、日本の原発で生成されるプルトニウムは、240Puが10%以上含まれていますので、核兵器の材料とはなり得ません。
「こうした現状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実だ。」
と、記事の中にありますが、そんな事実はないのです。

 広島と長崎に原爆を投下したアメリカが、日本に核兵器の材料となり得るプルトニウムを持たせるなんてことがあるはずが無いのです。
 西洋人の考え方では、日本に核兵器を持たせたら、広島と長崎の仕返しをされかねないと考えるのが当然だからです。また、中国やロシアも、日本が核武装に必要な黒鉛炉を建設するのを許すはずがありません。

 読売新聞の社説を書いた方が、このような初歩的な知識を持っていないはずがありません。

 解っていて、こういう実しやかな嘘を書くから、日本のメディアは性質が悪いのです。

 いくら原発で金儲けを続けたいとしても、こういう嘘はいけないのではないかと、私は思います。

(by 心如)
 

 

DSC03778.JPG
 写真は、ちい散歩(下関編)で、地井さんに紹介していただいた通りです。


 

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コメント 10

大将

あきれてものも言えないとはこのことですね
原発が無いと電力不足と言うのも嘘なのかもなぁ
by 大将 (2011-09-10 21:59) 

ぽんすけ

こんばんは。
確かにそうですネ、この国は前のとんちき総理が広島で国民をミスリードしまくりでしたから・・・

でもまあ、私は原発はもちろん必要だし、核兵器も日本には必要だと思います・・・
by ぽんすけ (2011-09-10 23:26) 

心如

大将さん コメント 有り難うございます
 過去記事にも書きましたが、原発なんてなくても、天然ガス複合サイクルの火力発電所を建設すれば、安くて安定した電力は供給可能です。
 原発が必要なのは、高い電気代を設定して、利益額を増やし、高い役員報酬を貰いたい電力会社の役員だけです。消費者は、安い電気のほうが良いに決まっています。
by 心如 (2011-09-11 06:03) 

心如

ぽんすけさん コメント 有り難うございます
 日本が核武装するのは賛成です。でも、54基の軽水炉は、核武装の役には立たないという事をハッキリさせておきたいと思います。
by 心如 (2011-09-11 06:06) 

shira

 フクイチ(福島第1発電所)がなくても、東電は東北電力管内に電力を融通するだけの「余力」がありましたもんね。
 私は核武装反対派ですけど、この記事はとてもいい記事だと思います。
by shira (2011-09-11 21:25) 

心如

shiraさん コメント 有り難うございます
 核武装に反対というのは、被爆の悲惨さを考えれば、そういう意見もあって当然だと思います。
 核兵器は、万が一、使えば悲惨なことになる。だから、核保有国どうしの戦争は出来ないというのも事実だと思います。日本が、アメリカやロシア、中国と、国際社会で対等に付き合うには、核武装するしかないのも事実ではないかと思います。
 日本が核武装していたら、ロシアは北方領土を返還するかも知れません。中国も、尖閣諸島にちょっかいを出さないと思います。
 核武装をしたいと言うだけでも、アメリカにとってはプレッシャーになると思いますが…
by 心如 (2011-09-12 18:26) 

qooo

なるほど、ひとえにプルトニウムといっても、
全てが核兵器に使用するのに適している訳では、
ないんですね〜。なるほど〜。
知らない事が多かったので、勉強になりました!

日本は、今回の福島を教訓として、
原子力発電所の設置場所に関して整理していけたらいいのになと、
思ったりします。半径20キロ圏内は無人にして。。。地価や税金を安くするとか。。。もう、してるのかな??
格差拡大につながっちゃうかな????
by qooo (2011-09-13 09:13) 

心如

qoooさん コメント 有り難うございます
 そうですね。日本にある軽水炉では、兵器級のプルトニウムは得られないのです。だから、アメリカは、日本が軽水炉を作ることを許しているのだと思います。
 今後は、原発の新規建設はほぼ無理だと思います。既存の原発を、順次、廃炉にしていくしかありません。下手に、老朽化した原発を延命するのは、事故の元なので止めて欲しいと思いますが…
by 心如 (2011-09-13 21:12) 

とりのさとZ

 読売の中興の祖、正力松太郎氏、初代原子力安全委員会委員長でした。

 だから、読売自体がずっと推進サイドなんですね。

by とりのさとZ (2011-09-18 18:41) 

心如

とりのさとZさん、コメントを頂き有り難うございます
 世論を操作して原発を日本に導入したのは讀賣(国売)新聞が主犯だというのは歴史的な事実だろうと思います。
 核廃棄物の最終処分の目処も立たないような状況で、これ以上、原発を運転するのは無責任だと私は思いますが…
by 心如 (2012-02-01 20:19) 

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