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予防原則はどこへ…!? [政治]

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http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110430k0000m010073000c.html
『福島第1原発:内閣官房参与、抗議の辞任』

 内閣官房参与の小佐古敏荘(こさこ・としそう)・東京大教授(61)=放射線安全学=は29日、菅直人首相あての辞表を首相官邸に出した。小佐古氏は国会内で記者会見し、東京電力福島第1原発事故の政府対応を「場当たり的」と批判。特に小中学校の屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と異論を唱えた。同氏は東日本大震災発生後の3月16日に任命された。

 小佐古氏は、学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに採用されなかったことを明かし、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と主張した。

 小佐古氏はまた、政府の原子力防災指針で「緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべきもの」とされた「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」による影響予測がすぐに運用・公表されなかったことなどを指摘。「法律を軽視してその場限りの対応を行い、事態収束を遅らせている」と述べた。

 記者会見には民主党の空本誠喜衆院議員が同席、「同僚議員に20ミリシーベルトは間違いと伝えて輪を広げ、正しい方向に持っていきたい」と語った。空本氏は小沢一郎元代表のグループに所属する一方、大震災発生後は小佐古氏と協力して原発対応の提言を首相官邸に行ってきた。菅首相は大震災発生後、原子力の専門家を中心に内閣官房参与を6人増やしている。【吉永康朗】

 ◇「子ども20ミリシーベルト」専門家も賛否

 政府は国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力事故の収束段階で適用すべきだとして勧告した年間許容量1~20ミリシーベルトの上限を根拠に採用。1日8時間を屋外で過ごすとして子どもの行動を仮定した上で、放射線量が年20ミリシーベルトを超えないよう、毎時3.8マイクロシーベルト以上の学校などで屋外活動を1日1時間に制限する通知を文部科学省が19日に出した。

 文科省は「余裕を持って決めた基準で、実際に年間20ミリシーベルトを被ばくすることはない」と説明するが「子どもを大人と同様に扱うべきでない」として他の放射線の専門家からも異論が出ているほか、日本弁護士連合会も反対声明を出している。

 ICRP主委員会委員の経験がある佐々木康人・日本アイソトープ協会常務理事は「政府は厳しい側の対応をとっており、影響が出ることはない」と理解を示す一方、「被ばくを減らす努力は必要だ」と指摘する。【西川拓、永山悦子】

毎日新聞 2011年4月29日 21時08分(最終更新 4月30日 1時15分)
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 放射線に被曝したらどうなるのか?

 年1ミリSvの場合、発癌リスクは0.01%だと聞いたことがあります。これは、交通事故による死亡率よりも低い確率です(交通事故の死亡率は、年0.0047%くらいです。70年間生きていると、0.0047%/年×70年=0.33%となります)。
 年1ミリSvの放射線を被曝しても、それが原因で癌になるのは0.01%なら、他の原因で癌になる人のほうが圧倒的に多いので問題にしてもあまり意味がないと思います。

 年に10ミリSvの放射線に被曝した場合も、その後に癌を発症する確率は0.1%だとすると、これも交通事故の死亡率よりも低いので、年10ミリSvの被曝が何年にもわたって続くのでなければ、あまり気にしないでよいのかもしれません(ただし、胎児や乳幼児は、放射線に対する感度が成人よりも高いと言われていますので、妊婦やお子さんは、年10ミリSv程度の被曝でも避けたほうがよいと思います)。

 年に100ミリSvの放射線に被曝した場合は、その後に癌を発症する確率は1%と聞いています。これは、交通事故による死亡率よりも高い確率になります。しかし、100人いれば、40~50人は癌で死ぬ時代です。これが1%くらい増えても大したことはないという考え方もあると思います(私のように、50歳に近い年齢になれば、被曝がなくても癌になるリスクが毎年2~3%はあるのですから…)。そいう意味で、子供を作る予定のない中高年の男性は、年100ミリSvくらいの被曝をしても、そんなに大騒ぎする必要はないのかもしれません。
 しかし、胎児や乳幼児はもちろん、未成年者なども、年100ミリSvの被曝は避けるべきだと思います(10歳未満のお子さんが、年100ミリSv以上の放射線に被曝した場合は、成人男性に比べて、数倍の発癌リスクがあるという研究報告もあるようです)。


 今回の、小学生や中学生に、年20ミリSv以下なら被曝させてもよいというのは、誰が言い出したのだろうか?

 発育段階にある小学生や中学生が、年20ミリSvの放射線に被曝すれば、小児癌にかかるリスクは間違いなく高くなります(1%程度としても、児童が100人いれば1人は被曝が原因で癌になるかもしれないのです)。しかし、万が一、自分の子供が癌にかかっても、被曝が原因だと断定するのは容易ではありません(被曝していない者でも、癌にかかる可能性は否定できないのですから…)。

 こういう場合こそ、『予防原則』の出番ではないのだろうか?

 温暖化と因果関係が必ずしも明確ではない二酸化炭素の排出量を減らすことよりも、小児癌の原因となる可能性が高い児童・生徒の被曝を減らすほうが、政府として努力すべきことではないのかと、私は声を大にして言いたいのです。

(by 心如)
 

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【追記】
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http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110430-OYT1T00257.htm
『原発対応「場当たり的ではない」…首相が反論』

 菅首相は30日午前の衆院予算委員会で、東京電力福島第一原子力発電所事故の対応のため、内閣官房参与に任命した小佐古敏荘(こさことしそう)東大教授(放射線安全学)が辞任し、「首相官邸の対応は場当たり的だ」と批判したことについて、「参与の意見も含め、議論の結果に基づく原子力安全委員会の助言で対応しており、決して場当たり的な対応とは考えていない」と反論した。

 小佐古氏の辞任理由については、「専門家の中での見解の相違から辞任した」と述べた。自民党の小里泰弘氏の質問に答えた。

(2011年4月30日13時36分  読売新聞)
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 菅さん、あなたの立場なんて、どうでもよいのです

 問題なのは、年20ミリSvの放射線に被曝しても、児童・生徒は安全なのかどうかです

 『国民の安全を第一』に考えてください

 あなたの保身のために、子どもたちを犠牲にすることがあってはなりません

 

【追記、その二】
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http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110430-OYT1T00944.htm
『校庭利用基準、安全委開かず「差し支えない」』

 福島第一原発事故について政府が設定した校庭利用基準を検討する際、原子力安全委員会班目(まだらめ)春樹委員長が正式な委員会を開かず、2時間弱で「差し支えない」とする助言をまとめ、国の原子力災害対策本部に回答していたことが分かった。

 安全委事務局の加藤重治・内閣府審議官が30日の記者会見で明らかにした。

 加藤審議官によると、4月19日午後2時に同本部から助言要請があり、事務局が、班目委員長を含む5人の委員から、対面と電話で意見を聞き、助言をまとめた。委員会が開かれなかったため、議事録もないという。加藤審議官は「19日以前から、文部科学省とは協議しており、委員の間でも話し合い、かなりの合意ができていた。この日の意見聴取だけでまとめたわけではない」と説明している。

(2011年4月30日23時54分  読売新聞)
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 どういうまとめ方をしたのかよりも、その基準値が本当に妥当なものかどうかが知りたいと思うのは私だけでしょうか・・・

 


【追記、その三】
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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110502-OYT1T01026.htm?from=main5
『「老婆心ながら守秘義務」と官邸、小佐古教授に』

 東京電力福島第一原子力発電所の事故対策を巡り、4月30日に内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘(こさことしそう)・東京大学教授が2日夕に予定していた報道関係者向け説明会が中止された。
 民主党の空本誠喜・衆院議員によると、小佐古教授が官邸から守秘義務の指摘を受けたことが、中止の理由だという。
 小佐古教授は、政府の事故対応に納得できないとして、29日に辞任の意向を表明した。空本氏によると、小佐古教授は2日夕、小学校の校庭利用などについて文部科学省が説明した放射線被曝(ひばく)限度の問題点について詳細な説明を行う予定だった。
 ところが1日、小佐古教授から空本氏に、「(官邸関係者から)老婆心ながら、守秘義務があると言われた」として、説明会には出席できないと電話で伝えてきたという。
 文科省は校庭利用の放射線被曝限度を年間20ミリ・シーベルトとしている。空本氏は「小佐古教授は、子供の被曝量はせいぜい年間5ミリ・シーベルトにとどめるべきだという考え。きちんと説明する場がなくなったのは残念だ」と話している。

(2011年5月2日23時14分  読売新聞)
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 放射線安全学の第一人者が、子供の被曝は年5ミリSvにとどめるべきだという考えを持っており、政府の事故対応に納得できないとして、内閣官房参与を辞任したのです。
 官邸は、守秘義務を盾に、自分たちに都合の悪いことを言わせないように仕向けたのです。
 菅(民主党)政権は、子ども(国民)の安全よりも自分たちの保身が大切なのですね…
 こんな馬鹿げた政権を支持する人がまだいることが私には信じられません。

「枝野寝ろ
 石原黙れ
 菅起きろ
 やっぱり菅は
 起きなくていい」
(詠み人知らず)
 

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BERSERKHAWKWIND

>『予防原則』の出番

私も全くその通りだと思います。

あと、一部補足させて頂きますと

>100人いれば、40~50人は癌で死ぬ時代です

ここは、ガンに罹患するのが2人に1人程で
死亡原因とされるのは3人に1人程です。
ガンにもよる、という事ですね。
by BERSERKHAWKWIND (2011-04-30 09:47) 

shira

 小川和久が朝日新聞で「危機対応は拙速を旨とすべし」と言っていました。必要以上かもしれない対応をするのが正義だと。これ結構気に入っています。学校現場でも大きなトラブルが発生したら、「ことによったらここまでやる必要はないかもしれない」レベルの対応をするのが普通です。
 今回の原発事故で慌てて在日関係者を引き上げさせた国がかなりあって、それを批判的に受け止める論調もありましたが、私はあれは別に過剰対応じゃないと思います。何も「わざわざ」原発が壊れた国に居続ける理由はないでしょう。
by shira (2011-05-01 00:18) 

大将

今まで耳にする事もなかったような単位で
しかも安全だ安全だと連呼
安全とは死亡率、危険率がゼロのはず
数値が小さければ良いとはならないはずだし
交通事故と比較しても根本が違う
特に被爆は体内に溜まり続けるとか
根本の話から訂正して欲しい物ですね
by 大将 (2011-05-01 08:05) 

心如

BERSERKHAWKWINDさん コメントを頂きありがとうございます
 死亡診断書の死因としては、癌は三分の一程度だというのは妥当だと私も思います。でも、死ぬまでに癌に罹る人が半分くらいはいるというのも事実のようです。
 直接の死因が癌ではなくて、心不全とか多臓器不全となるだけで、広い意味で癌に罹って死ぬ人と考えれば、百人いれば40~50人は癌で死ぬ時代と言えませんかね…
 厳密に言えば間違いだというのは解っています<(_ _)>
by 心如 (2011-05-03 01:19) 

心如

shiraさん コメントを頂きありがとうございます
 一番危険な時に、安全だと言っておいて、あとから実は危険な状況だったけど、国民がパニックになるといけないので隠していましたなんて…
 いまの政府は、国民に嘘をつくのも下手ですし、その後の対応も稚拙すぎます。こんな政権を誕生させた国民が馬鹿だといえばそれまでですが…
by 心如 (2011-05-03 01:25) 

心如

大将さん コメントを頂きありがとうございます
 今の政府は、子ども(国民)の生命や健康よりも、自分たちの保身しか考えてないことがはっきりしました。
 自分の身を守るのは自分の責任で判断しないと、政府の言う事を信じていたら危険かもしれません。
by 心如 (2011-05-03 01:27) 

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