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6000年前になにがあったのか…!? [科学]

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『新・進化論が変わる』
―ゲノム時代にダーウィン進化論は生き残るか―
(中原英臣、佐川峻/講談社 ブルーバックス B-1594)
2008年4月20日 第1刷発行

 脳を大きくする遺伝子

 脳の大きさに関係する遺伝子として、54ページで述べたFOXP2遺伝子の他に、マイクロセファリン遺伝子とASPM(abnormal spindle-like microcephaly associated)遺伝子が注目されている。
 FOXP2遺伝子は言語に関係し、マイクロセファリン遺伝子をもつことで抽象的な概念を理解できるようになったと考えられている。またASPM遺伝子には大脳皮質を大きくする働きがあって、これがうまく働かないと、高度な機能を司る大脳皮質がうまく形成されなくなる。
 ASPM遺伝子はヒトだけではなく、サルなどももっているが、ヒトとサルではその塩基配列が少し異なっていることがわかっている。サル同士の変異はASPM遺伝子がつくり出すタンパク質には影響がない変異が多かった。これに対してヒトでは、異なるタンパク質をつくってしまう変異の割合が、サル同士の変異の二倍以上あることがわかった。
 これは、サルとヒトではASPM遺伝子の働きが異なることを示しており、その働きの一つが大脳皮質を大きくすることに関係しているのである。ASPM遺伝子の大脳皮質を大きくする働きは、ヒトのほうがサルより強いということである。

 「脳をつくる遺伝子」によるヒトの進化

 19ページで紹介した分子時計の手法で、ヒトがこれらの遺伝子をもった時期をさぐると、FOXP2遺伝子は20万年前、マイクロセファリン遺伝子は3万7000年前、ASPM遺伝子は5800年前となる。これらの時期には、ヒトの進化の歴史上でも興味深い出来事があった。
 私たち現生人の祖先である新人は、FOXP2遺伝子の出現と同じ20万年前にアフリカで誕生した。そしてマイクロセファリン遺伝子が出現した時期に近い三万年前に、ヨーロッパやさらに遠方のアジアに拡散していったのである。
 気候や風土が異なる新天地で暮らすには、食糧の獲得、住居の確保などの大きな適応能力が要求される。新人は、この能力をマイクロセファリン遺伝子によって発揮できたのかもしれない。また新人は旧人と違い、芸術や高度な石器をもっていた。おそらく豊かな言語ももっていただろう。それらを可能にした要因の一つが、マイクロセファリン遺伝子だったのかもしれない。
 また、ネアンデルタール人が絶滅したのも、マイクロセファリン遺伝子が出現した時期に近い3万5000年ほど前である。クロマニョン人に代表される新人が、旧人であるネアンデルタール人を絶滅させたという直接の証拠はないが、何か関係があるのかもしれない。
 ネアンデルタール人もマイクロセファリン遺伝子をもっていたのだろうか。いまとなっては調べようもないので確かなことはいえないが、興味深いポイントである。新人と旧人は共存していた時期があるので、マイクロセファリン遺伝子をやり取りしていた可能性はある。ただしいずれの可能性も、現在のところでは想像の域をでない。
 さらに、脳の大きさに関係するASPM遺伝子の出現した5800年ほど前といえば、エジプトなどで人類が高度な文明を築きはじめた時期と一致する。マイクロセファリン遺伝子にASPM遺伝子が加わって、現在の国家、科学、芸術などを統合した高度な文明を築き上げることが可能になったようにも思える。
 人類が、わずか6000年前に決定的な進化を遂げていたとすれば、それは大きな驚きである。遺伝子の研究が進むにつれて、もっと大きな驚きがいくつも待っているのかもしれない。
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 この本に書かれていることが事実だとすると、ヒトの脳が言語を理解できるようになったのは20万年くらい前のようです。そして、抽象的な概念が発達したのが3万7000年くらい前で、さらに、大脳皮質が大きくなり、脳の機能が飛躍的に発達して、いまのようなヒトになったのは、たったの6000年前だというのですから驚きです。
 そういえば、インダス文明、メソポタミア文明、エジプト文明、黄河文明など、古代文明が発達したのはそのくらいの時期でしょうか。

 遺伝子情報を調べたら、分子時計によって、どのくらいの時期に、どんな進化が起きたのかは分るとしても、どうしてその進化が起きたのかまでは分りません。小さな変異が積み重なって、自然淘汰によって進化が起きるというダーウィンの進化論では、このような大きな変異を説明できないのではないかと思います。

 わずか6000年前に、ヒトの脳が決定的な進化を遂げたのが事実だとしても、その進化は、人類全体にどうやって広がったのでしょうか。ごく一部のヒトに偶然に変異が生じたのであれば、それが人類全体に、短期間で行き渡る仕組みがよく分りません。
 自然淘汰は、進化の結果であって、進化の原因ではないのです。問題は、なぜ変異が起きるのかなのです。いまのところ、この疑問に対する妥当な答えは聞いたことがありません。

 生命の発生と進化は、どんなに科学が進歩しても、人間の手に負えるような代物ではないのかもしれませんが…

(by 心如)
 

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 下関市垢田沖の人工島の工事が続いています。土地が余っている下関で、人工島なんて必要なのかと思いますが… 土建屋さんの失業対策にはなるのかな。。。

新・進化論が変わる (ブルーバックス)

新・進化論が変わる (ブルーバックス)

  • 作者: 佐川 峻
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/04/22
  • メディア: 新書


吉幾三 酒よ〕 


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コメント 2

大将

確かに生命の発生と進化は人間の手には負えないかもしれませんね
そういえば
人と生活する動物も人の言葉をある程度理解している
という人がいました
ただ唇の形状が人と違うために人が理解できるような
言語を話す事が出来ないんだと
もしかして、自分と生活する犬や猫が自分の言葉を理解しているなら
楽しいな(^^♪
ん?反面怖いかも。。。
by 大将 (2011-09-26 21:34) 

心如

大将さん コメント 有り難うございます

 生命の発生に関しては、どんなに科学が進歩しても、その謎を解くことは無理だろうと思います。いつまで経っても、単細胞生物すら人間には創り出せないかと…
 進化に関しても、いろんな説がありますが、すっきり説明できているのは聞いたことがありません。私が生きている間に、進化の仕組みが解明されるのかどうか… あまり期待せずに待ちたいと思います。
by 心如 (2011-09-28 19:34) 

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